薬草 それぞれの特徴と効能
よもぎ
≪和名≫ 蓬、艾葉、ヨモギ、がいよう、ガイヨウ
≪生薬名≫ ガイヨウ
≪科目≫ キク科のヨモギ属
≪出典≫ 名医別録
≪分布≫ 本州から九州の日本各地と朝鮮半島の野原や道端や民家の庭先で普通に見られる多年草の植物です。
≪成分≫ 精油と酵素や多糖類、ビタミンA、B1、B2、C、各種ミネラルなど
≪煎じ方≫
乾燥ヨモギ5g~10gを水600cc~800ccの土瓶の中に入れて弱火で15分~20分煎じて一日数回服用します。
《よもぎを煎じて服用した場合の効果》
血行促進、冷え性の解消、止血、不正出血、月経異常の解消、便秘の解消、骨粗鬆症の予防、血圧の安定
艾葉と他の薬草(ドクダミ、ヨモギ、麦茶など)と一緒に煎じて服用しても良い。また生のヨモギの葉を揉んで出血している患部に当てていると止血する。
≪お茶として飲む場合≫
ヨモギと一緒にドクダミ、麦茶など効能のある薬草とブレンドするといいです。
≪入浴剤として使用した場合の効果≫
ヨモギの入浴剤は神経痛、腰痛、打ち身、捻挫、痔に効果があります。
≪生葉として≫
生のヨモギを葉を揉んで出血している部位にその汁を付けると止血出来ます。
≪採取時期・管理・保存≫
ヨモギの葉を5月から7月の頃の採取して日陰乾燥します。日陰乾燥により精油成分の発散を防ぎます。
よもぎ・よもやま話
☆古代中国ではヨモギには邪気を払う魔よけの力があると信じられており、ヨモギで作ったお人形を飾ったり、菖蒲と一緒に軒下に吊るしたりしました。
☆またヨモギは薬食草と言われ、煎じて服用する薬やお灸の材料としての薬にもなり、餅やお浸し、天ぷらにして食することもできる万能植物です。
☆ヨモギの茎葉を丹念に揉んで作ったものを「艾(モグサ)」といい昔は石臼で何度も挽いて製造しました。
※日本では主にオオヨモギの裏の毛を集めたものをモグサにします
お灸をすることを「灸(ヤイト)をすえる」と言いますが、「ヤイト」は元々「ヤケド」から変化した言葉と言えます。
ヨモギに含まれる精油成分がお灸によって身体のツボから浸透して不調を直します。
お灸に用いるモグサは江戸の昔から伊吹山で採れたヨモギで作った「伊吹モグサ」が有名ですが今は伊吹山のある滋賀県ではモグサの製造はあまり行われていません。しかし今も昔も伊吹山は薬草の宝庫です。
☆ 日本には古来より日本独特の薬草文化がありました。
その薬草文化を和薬(わやく)といい民間の間で細々と家伝、秘伝として伝えられてきました。
☆和薬と言われる代表的な薬草はドクダミ、ゲンノショウコ、センブリ、キササゲ、タラノキ、ウラジロガシ、カキドオシ、ヨモギなどです。
びわ
≪和名≫ 枇杷 びわ
≪生薬名≫ ビワヨウ
≪分布≫ 日本各地でみられるが元は中国が原産の常緑高木植物
≪科目≫ バラ科ビワ属
漢字名の枇杷は葉が楽器の「琵琶」に似ているためこう付けられたと言われています。
《成分》製油、ネロリドール、ファルネソール、カンフェン、ミルセン、青酸配糖体の
アミグダリン、サポニン、タンニン
《びわの葉を煎じて服用した場合》
咳止め、暑気あたり、胃腸病、皮膚病
枇杷葉と他の薬草(ドクダミ、ヨモギ、麦茶など)と一緒に煎じて服用しても良い。
《入浴剤として使用した場合の効果》
枇杷の葉には殺菌作用があり、肌のトラブル解消、美肌などに効果がある。
☆ビワの葉の上にお灸をすえるとツボを刺激して身体の不調を取り除く
びわ・よもやま話
☆びわは昔から「医者いらず」と言われるぐらい薬効が優れています。
☆別名で「医者いらず」と言われる薬草は「アロエ」と「ゲンノショウコ」です。
☆江戸時代の川柳に「枇杷と桃、葉ばかりながら暑気払い」と詠まれており、昔は体内にこもった熱をビワの葉や桃の葉の力で体外に排出させて日射病や暑気あたりを予防しました。
1780年代、江戸時代には「枇杷葉湯売り」といって薬缶で煎じたものを試飲させながら行商していました。
かき
≪和名≫柿 カキ、柿蔕
≪生薬名≫ シテイ
≪科目≫ カキノキ科 カキノキ属
≪分布≫ 栽培は日本全国は元よりアジア、ヨーロッパなど世界各地の温暖な地域で栽培されています。
柿は元々東アジア(中国大陸)原産の植物ですが古い時代に中国大陸から朝鮮半島を経て日本に入り、日本で改良されて江戸時代に日本から欧州、アメリカに伝わったので日本原産の植物とも言えます。
《成分》 タンニン、ビタミンC、ビタミンK、B1、B2、ミレラル、カロチン、ルチン、クエルセチン等が多く含まれています。
≪使用部位≫
葉…柿葉
果実…柿子(シシ)
干し柿…柿餅(シヘイ)
干し柿の表面に現れた白い粉…柿霜(シソウ)
柿の蔕…柿蔕(シテイ)
樹皮、根皮、花、柿渋…使用する場合があります。
《かきの葉を煎じて服用した場合》
ビタミンCは柿の葉の重量の約1%含まれており、柿の葉のビタミンCはプロビタミンCという熱に強く風邪予防に効果あり。
柿の葉は弱酸性ですので、コーヒーや緑茶とは一緒に服用しないでください
VCが半減する恐れがあります。
ドクダミ、ヨモギ、ハトムギなどと一緒に服用しても相乗効果がみられます。
《柿の葉を入浴剤として使用した場合》
乾燥肌予防、肌荒れ、あせもや湿疹などに効果。
≪採取時期≫
柿の葉の採取時期は6月~8月の若葉(渋柿でも甘柿でもどちらでもよい)を採取しよく水洗いをしてから2分~3分ほど蒸し木で蒸します。それを千切りにして日向又は風通しの良い場所で乾燥させます。
柿渋を作る場合は渋柿の果実が青い時に採取します。
柿の蔕は柿を食べた後日干しします。
どくだみ
≪和名≫ 十薬、じゅうやく、毒溜、独痛、ギョセイソウ、ドクダミ
≪生薬名≫ ジュウヤク
≪科目≫ どくだみ科 どくだみ属
≪分布≫ 日本全土から中国アジアなどに分布しており日当たりがよく湿気の多い場所に生える 多年草で民家の庭先や山野で見る機会が多い植物です。
≪出典≫ 「名医別録」(502年)古代中国漢の時代にドクダミの名前が初めて登場した書籍
李時珍「本草綱目(ほんぞうこうもく)1596」
日本では平安時代に深根輔仁(ふかねのすけひと)によって書かれた「本草和名(ほんぞうわみょう)918」
《成分》臭成分デカノイルアセトアルデヒド、カリウム塩、
茎や葉にはラウリールアルデヒドにはクエルシトリン、花穂にはフラボン系のイソクエルシトリン、
《どくだみを煎じて服用した場合》
利尿作用、便秘解消、便秘を伴う肌のトラブル、動脈硬化の予防、高血圧などに効果がある
《入浴剤として使用した場合》
身体をポカポカと暖め、あせもや湿疹予防、血行促進による肩こり、腰痛、疲労回復に非常に効果がある。
≪採取時期≫ 6月~7月の初夏、花が咲いている頃に地上部全体を採取して水新井した後に天日で乾燥します。
☆和薬と言われる代表的な薬草はドクダミ、ゲンノショウコ、センブリ、キササゲ、タラノキ、ウラジロガシ、カキドオシ、ヨモギなどです。
☆日本ではドクダミ、ゲンノショウコ、センブリを3大民間薬と言います。
どくだみ・よもやま話
貝原益軒の「大和本草」によると
「我が国の馬医これを馬に用いると十種の薬の効果あるので、十薬と言う」と書かれています。
どくだみは臭気が嫌われる原因ですが生の葉は匂いますが乾燥後はいやな臭いは完全になくなります。また生の臭み成分はデカノイルアセトアルデヒドやラウリールアルデヒドで、生の葉を揉んで患部に付けるとそれらの成分が殺菌・防腐したりします。
熊笹
≪和名≫ 隈笹、くまざさ、熊笹
≪生薬名≫ クマザサ
≪科目≫ イネ科 ササ属
≪分布≫ 日本全国山間部に野生している植物、とくに西日本に多い。
≪出典≫ 本草綱目 「男女の吐血、嘔吐、下血、小便渋滞、喉痺、腫瘍を治す」と書かれている。
《成分》鉄クロロフィリン、クマ笹多糖体、リグニン、安息香酸、葉緑素、ビタミンC、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、カルシウム
《くまざさを煎じて服用した場合》
鉄クロロフィリンは熊笹に多く含まれている葉緑素成分で、主に脱臭効果が強いが、人間の血液に含まれるヘモグロビンによく似た働きがあり、貧血予防、高血圧予防などが期待できる。葉緑素成分は胃炎に対して効果が期待できる
安息香酸は殺菌、防腐作用が期待できる
《入浴剤として使用した場合》
殺菌作用による吹き出物、あせも、切り傷などのお肌のトラブルに効果がある。
≪採取時期≫ 採取時期は特に決まっていない
クマザサ・よもやま話
山本茂実が書いた「ああ野麦峠」によれば「野麦峠の「野麦」というのは、野生や人間が栽培した麦の実のことではなく、峠一面に自生するクマザサの事を指します。そのクマザサが10年に1度ぐらいの割合で花を咲かせ稲穂のような実を付けます。昔、大凶に見舞われた農民がこのクマザサの実を粉末にし、それを団子にして食する事で飢えをしのいだと言われ、飛騨地方ではクマザサの事を野麦と呼んだ」とあります。
またクマザサの葉がなくては生きていけない動物といえばパンダが有名ですがパンダ以外の熊もクマザサを食します。
熊は冬眠前に大量にクマザサを食べます。冬眠中は一度も排便をしない為に血液や内臓が便のために汚される恐れがあります。そこでクマザサを大量に食するとクマザサの成分のおかげで、体内の解毒と腐敗予防ができると言われています。
桑
≪和名≫ 桑、くわ、桑白皮、そうはくひ、桑葉、そうよう、桑椹(実)、そうじん
≪生薬名≫ ソウハクヒ
≪科目≫ クワ科 クワ属
≪分布≫ 中国原産の落葉高木で北海道から九州の日本各地と朝鮮半島から中国大陸の産地に分布する落葉高木植物ですが昔から絹糸になるマユを作る蚕の餌として栽培されてきました。
≪出典≫ 神農本草経
《成分》DNJ(1-デオキシノジリマイシン)が含まれており、DNJは桑にしか含まれない成分で、これは砂糖やデンプンを小腸内でαーグルコシダーゼと言う糖分解酵素が分泌されるのでブドウ糖に変えて吸収させるのを阻害させる。
《くわを煎じて服用した場合》
糖尿病の予防と改善、血糖値上昇の抑制などに効果
≪採取時期≫
根…桑の根を掘り出して水洗いをし、生のうちに外側の皮とコルク層を取り除いて日干しします 鎮咳、去痰、利尿、咳止、気管支炎
葉…7月から8月の夏季に厚みのある葉を摘み取ってから日干しします。美容と健康維持
枝…秋から冬に枝を切り取ってから日干しします。 美容と健康維持
実…食する場合は黒紫になってから食し、果樹酒にする場合は赤い状態の時に採取し、水洗いをしてから漬け込みます。美容と健康維持
クワ・よもやま話
桑の葉は古代中国では「神仙茶」と呼ばれ、色々な病気予防に服用されていました。
中国では東方海上の島国に「扶桑」と呼ばれる巨木(神木)があると言われていました。日本を別名で「扶桑国」といい昔は日本に桑の巨木があったのかもしれません。
古代日本(卑弥呼の時代)について書かれた「魏志倭人伝」に桑を蚕に与えて糸を紡いでいたとの記事が見られ、弥生時代や卑弥呼の時代には桑を利用していたことが分かります。時代が下がって鎌倉時代に栄西禅師が書いた茶書の「喫茶養生記」によると、「飲水病」(糖尿病)に桑を服用すると数日で効果がみられる。とあります。
これは桑に含まれる成分のDNJ(1-デオキシノジリマイシン)が砂糖やデンプンを小腸内でαグルコシターゼという糖分解酵素がブドウ糖に変えて小腸からの吸収を阻害します。
桃
≪和名≫ 桃、桃仁(桃核仁、桃核、光桃仁、桃仁泥)桃実、桃花、白桃花
≪生薬名≫ オウニン
≪科目≫ バラ科 サクラ属
≪分布≫ 世界各地で栽培されている
≪出典≫ 神農本草経
《成分》葉…シュウ酸マグネシウム、カリウム塩、タンニン、アミグダリンなど
《ももを煎じて服用した場合》
桃仁を煎じた場…オ血が原因の腹痛、炎症などを鎮める作用
があり、月経困難、月経痛、下腹部痛、便秘などに効果がある。
桃仁と他の薬草(ドクダミ、ハトムギ、玄草、麦茶など)と一緒に煎じて服用しても良い。
《入浴剤として使用した場合の効果》
葉を入浴剤とした場合…収れん作用、菌の繁殖を防ぐ作用、消炎、解熱作用、強い紫外線による日焼けの炎症やあせも、虫刺され、湿疹等肌のトラブルに効果がある。
モモ・よもやま話
江戸時代の川柳に「枇杷と桃葉ばかりながら暑気払い」と詠まれており、昔は体内にこもった熱を枇杷葉や桃葉の力で体外に排出させようとしました。
昔から桃には不思議な力が宿ると言われており、中国では神の力が宿る木として邪気払いの効果がある、不老不死の効果がある、桃源郷にある植物など大変縁起の良い植物だと言われています。
日本では古事記によると、「イザナギが亡き妻のイザナミを追って死者の国黄泉の国に入るが変わり果てたイザナミを見て、黄泉の国から逃げ出し、地上と黄泉の国との境と言われる黄泉比良坂まで逃げて、そこに生えていた桃の実を投げて、黄泉の亡霊を追い帰し、その功績によりイザナギが桃の実に「オオカムズミ命」という神名を授けられました。」とあります。
又、家相風水では「陽木」と「陰木」と言われる木があり、「陽木」とは庭に植えると幸福をもたらす木を指し桃は家相では「陽木」に該当します。
メハジキ
≪和名≫ 目弾き、めはじき、益母草、ヤクモソウ
≪生薬名≫ ヤクモソウ
≪科目≫ シソ科 メハジキ属
≪分布≫ 本州から九州お粉和の日本各地や朝鮮半島から中国などの温帯地方に分布し生息場所として野原や日当たりのよい場所に自生している。
≪出典≫ 神農本草経
《成分》 フラボン配糖体のルチンや苦味質アルカロイドのレオヌリン、レオヌリヂン、スタキドリンなど、ラウリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、樹脂、塩化カリウム
特にレオヌリンには降圧、利尿作用があり、苦味質アルカロイドのレオヌリンには子宮運動促進作用などがある。
《益母草を煎じて服用した場合》
血液の循環向上、利尿、強壮作用を促進、オ血が原因の月経不順、月経痛、産後の止血、つわり、不妊症、腹痛などの緩和、女性ホルモンバランスが崩れて現れる肌荒れを改善
益母草+当帰・・・益母草と当帰を組み合わせることによりオ血症状を改善し、月経不順、月経痛、産後の止血、不妊症、腹痛などの症状を緩和。
益母草+艾葉・・・益母草と艾葉を組み合わせる ことにより冷え性を緩和して、冷えが原因の婦人病を治療します。
益母草+丹参+桃仁+紅花・・・益母草と丹参と桃仁と紅花を組み合わせると駆オ血薬として生理不順や月経痛、無月経の解消などの作用が期待できる。
≪採取時期≫ メハジキの花が見られる7月~9月に全草を刈り取り日干しにして乾燥させる。刈り取って乾燥させた全草を益母草(やくもそう)といいます。
メハジキ・よもやま話
メハジキの名前の由来は子供がメハジキの茎を短く切ってまぶたの間に挟んで目から弾いて遊んだ事からこの名前が付けられたと言われています。
ちなみに生薬名の益母草(やくもそう)の名前の由来と意味を分解してみると、「母に利益をもたらす草」となり昔から産後、不妊、月経困難などいろいろな婦人病に効果がある薬草です。
今から1380年ほど前の古代中国の唐時代の女帝の則天武后は益母草で毎日洗顔をしていたら50歳になっても15歳の少女のような肌をしていた…と古典にあります。
カワラヨモギ
≪和名≫ 河原艾、河原蓬、カワラヨモギ、茵陳蒿、綿茵陳、
≪生薬名≫ インチンコウ、メンインチン
≪科目≫ キク科 ヨモギ属
≪分布≫ 九州沖縄の日本各地、朝鮮半島から中国などの大陸や台湾、フィリピンなど熱帯地方に分布し生殖場所としては河原や砂浜、海岸などの乾燥した場所に
自生している多年草の植物
≪出典≫ 神農本草経
《成分》 全草にβーピネン、カピレン、カピロン、カピリンなどのテルペン化合物、ジメチルエスクチン、スコパロン、キャピラリシンなどの精油成分、苦味成分含有。
《カワラヨモギを煎じて服用した場合》
悪血瀉下して体内から取り去る、便秘、胆汁分泌促進、消炎利尿作用、駆虫作用、黄疸、肝炎、蕁麻疹、尿量減少の改善、浮腫、利尿、回虫駆除
茵陳蒿と他の薬草(ドクダミ、玄草、麦茶など)と一緒に煎じて服用しても良い。
《入浴剤として使用した場合》
痒みを抑える作用がある。
≪採取時期≫ 花穂が見られる様になる夏に全草を刈り取り日陰にてカラカラになるまで乾燥させ手揉みを行って花穂だけを採取します。
ミカン
≪和名≫ 陳皮、蜜柑、みかん、ミカン
≪生薬名≫ チンピ
≪科目≫ みかん科 ミカン属
≪分布≫ みかんはインドから東南アジアが原産地といわれその後中国で栽培され日本に渡来しました。日本には中国の温州から鹿児島県に渡来したのでみかんを「温州みかん」と名付けたといわれています。
≪出典≫ 神農本草経
《成分》精油成分のdーリモネン、γーテルピネン、フラボン配糖体類、ペクチン、クエン酸、シネフリン、ルチン、ヘスペリジンなど
ヘスペリジンには抗アレルギー作用、健胃作用がある。
《陳皮を服用した場合》
咳嗽、切れの悪い痰(湿痰)を伴う風邪症状緩和作用、芳香性健胃薬として食欲不振、嘔吐、消化不良などを鎮める作用、咳嗽、去痰、食欲不振、消化不良など
《入浴剤として使用した場合》 保温効果、風邪予防、血行促進による肩こり、腰痛、疲労回復に非常に効果がある。ビタミンCによる美肌効果とリモネンによるリラックス作用も期待出来る。また、陳皮と柚子皮を併用すると相乗効果がある。
≪採取時期≫ 秋から冬の温州みかんがオレンジ色に完熟した時に外果皮を採取し日陰干しで乾燥させます。
みかん・よもやま話
陳皮はお正月に飲む縁起物のお酒の「屠蘇散(とそさん)」に含まれています。
「屠蘇散」の正式名は「屠蘇延命散」と言い、誰が考案したかは諸説ありますが一番有力な説として、三国志で有名な華佗(かだ)が考案したと言う説が有力です。
蘇の意味として「蘇」は病をもたらす鬼を意味し、「屠」は屠る(ほふる)つまり「殺す」という意味で屠蘇を飲めば身体に害する病気を葬る事が出来ると考えられました。
屠蘇は中国では三国志時代に考案されましたがお正月の縁起物になったのは唐時代といわれ日本には平安時代に伝わり時代を経て江戸時代に庶民のお正月文化として浸透しました。
オケラ
≪和名≫ オケラ、白朮
≪生薬名≫ ビャクジュツ
≪科目≫ キク科 オケラ属
≪分布≫ 本州、四国、九州などの日本各地、朝鮮半島、中国東北部などの東アジア一帯の日当たりのよい草地や山野などでよく見られる。
≪出典≫ 神農本草経
《成分》 アトラクチロンや3βーヒドロキシアトラクチロン、3βーアセトキシアトラクチロンなどのセスキテルペンやアトラクチノライドーⅠ、Ⅱ、Ⅲ等やポリアセチレン化合物など。
《オケラを煎じて服用した場合》
健胃・整腸、利尿、鎮痛、胃腸病、食欲不振、下痢、神経痛、眩暈、動悸、息切れ、水腫、
また白朮と他の薬草(ドクダミ、ヨモギ、ハトムギ、麦茶など)と一緒に煎じて服用しても良い。
☆ 白朮+葛根・・・白朮と葛根を組み合わせることにより体表にある水毒を葛根が取り去り、体内にある水毒を白朮が取り去る。(漢方処方例・・・葛根湯加朮附)
オケラ・よもやま話
☆梅雨の時期にオケラの根茎を納戸や土蔵、戸棚の中で焚く(燻る)と除湿効果があると言われこの理由としてオケラに含まれる成分の一つである2ーフルフラールがカビの繁殖を抑えるといわれます。又、夏の夜にオケラを焚いた煙で蚊を追い払ったともいわれます。この効果に昔の人は不思議な魅力と魔力を信じて人間に降りかかる邪気を追い払う儀式に用いました。その儀式として有名なのがお正月に飲む縁起物のお酒「屠蘇散」です。
オケラ(白朮)は「屠蘇散(とそさん)」に含まれています。
「屠蘇散」の正式名は「屠蘇延命散」と言い、誰が考案したかは諸説ありますが一番有力な説として、三国志で有名な華佗(かだ)が考案したと言う説が有力です。
蘇の意味として「蘇」は病をもたらす鬼を意味し、「屠」は屠る(ほふる)つまり「殺す」という意味で屠蘇を飲めば身体に害する病気を葬る事が出来ると考えられました。
屠蘇は中国では三国志時代に考案されましたがお正月の縁起物になったのは唐時代といわれ日本には平安時代に伝わり時代を経て江戸時代に庶民のお正月文化として浸透しました。
☆京都の八坂神社では大晦日から元旦にかけて八坂神社に参拝して邪気を追い払い、一年の無病息災をお願いする「朮(オケラ)詣り」があります。
他に東京の五条天神社では2月3日の節分に邪気払いとして行われる「うけらの神事」もあり日本列島の西と東でオケラは昔から邪気を追い払う力があると信じられてきました。
シナモン
≪和名≫ ニッキ
≪生薬名≫ ケイヒ
≪科目≫ クスノキ科
≪分布≫
≪出典≫ 神農本草経
《成分》 シナモンの主成分は桂皮アルデヒドで、ンナミックアルデヒドとも呼ばれ、40℃前後でもっとも香りを発散する。
《シナモンを煎じて服用した場合》
抗菌、防腐、健胃腸、血流を改善、むくみ予防、消を促進、糖尿病を予防改善
シナモンは、生であれ加熱調理後であれ、α-アミラーゼ、α-グルコシダーゼのいずれに対して、顕著な阻害作用を示し、糖尿病予防への可能性が示唆された
キハダ
≪和名≫ 黄肌、きはだ
≪生薬名≫ オウバク
≪科目≫ ミカン科 キハダ属
≪分布≫ 本州、四国、九州などの日本各地、朝鮮半島、中国東北部などの山間部に生えている落葉樹木。
≪出典≫ 神農本草経 新修本草
黄柏は黄膚(きはだ)樹皮で、黄肌(きはだ)の樹皮は二層構造になっており、外側のコルク層をはぎ取ると内側から黄色の肉皮が出てきます。これを採取し乾燥させた物を黄檗(おうばく)といいます
《成分》 アルカロイドのベルベリン、パルマチン、フェロデンドリンやマグノフロリン、
ゲアニジン、メニスペリン、フィトステリンエステルなどの成分と苦味質のオーバクノン、リモニンや
粘液質など。
《キハダを煎じて服用した場合》 胆汁分泌促進作用、膵液分泌促進作用、軽い利尿作用、健胃・整腸作用、消炎作用、鎮痛作用などがあり、胃腸病、食欲不振、止瀉、下痢、神経痛、口内炎などの症状に効果がある。
☆ 黄柏と他の薬草(ドクダミ、ハトムギ、ヨモギ、麦茶など)と一緒に煎じて服用しても良い
キハダ・よもやま話
☆黄柏には防虫効果があり昔は写経用の紙を染めるのに用いられました。
中国の敦煌から出土した経典に黄柏で染めた紙があり、日本では正倉院の宝物殿に「黄紙」、「黄染紙」があるがそれらは黄柏で染めた紙です。
☆民間療法としてのキハダは日本人にとって馴染の深い植物で、古くから薬として利用していた歴史があり、古くは縄文時代の遺跡から発見されています。(染料や薬として利用されていた)
☆黄柏を含んだ有名な民間薬(胃腸病、腹痛の治療薬)として奈良県の高野山や吉野山などで製造販売されている「陀羅尼助(だらにすけ)」、長野県の飛騨(木曽)や信州(御嶽山)などで製造販売されている「百草丸(お百草)」、鳥取県の大山近くで製造販売されている「煉熊(ねりぐま)」などが全国にありますがこれらのお薬の期限として言い伝えられている話として奈良時代の修験者(しゅげんしゃ)の役小角(えんのおずぬ)が疫病が流行って苦しんでいる庶民に黄柏を煎じて助けたと言い伝えがあり、昔から修験者の常備薬だったようです。
ベニバナ
≪和名≫ 呉藍、紅藍、くれのあい
≪生薬名≫ ベニバナ
≪科目≫ キク科 ベニバナ属
≪分布≫ エジプトが原産の越冬植物
≪出典≫ 本草和名
シルクロードを経て奈良時代に渡来し口紅の原料、紅色染料用、油料用
切り花用などに日本各地で栽培されてきました。
《成分》紅花に含まれる成分は赤色色素のカルタミン、黄色色素のサフロールイエロー、脂肪油のオレイン酸、リノール酸などが含まれておりリノール酸はコレステロール改善作用、動脈硬化予防作用がありる。
《ベニバナを煎じて服用した場合》
花は通経薬、婦人病薬として更年期障害、生理不順などの婦人病に用いられたり、血行障害が原因の冷え性の改善、浄血薬としてコレステロール値の改善、動脈硬化の予防などに用いられる。
≪採取時期≫
6月から7月の初夏の早朝に花を摘み取り、水洗いをし、黄色色素を抜き取ってから2日から3日発酵させてから手で揉み、手で揉んだ花を広げてムシロで乾燥させます。
クズ
≪和名≫ 葛、くず、葛蔓、くずかずら、葛根
≪生薬名≫ カッコン
≪科目≫ まめ科 クズ属
≪分布≫ 北海道から九州の日本各地と朝鮮半島、中国の東アジアの温帯地方の山野や土手などに生えるつる性の植物です
≪出典≫ 神農本草経
《成分》」
葛に含まれる成分は根に澱粉、イソフラボン誘導体のダイジン、ダイゼインやプエラリン、カッコネイン、プエラロールなどが含まれており、イソフラボン誘導体のダイジン、ダイゼインは鎮痛、鎮痙作用があり、血行を促して、肩こりの軽減に役立つと言われている。
《くずを煎じて服用した場合》
葛根を服用すると発汗、解熱、鎮痙、鎮痛、止渇作用があり、感冒、首や肩、背中の凝り、神経痛などの症状を緩和させる。
ペオノールには大腸菌やブドウ状球菌などの菌類の増殖を抑える作用や抗菌作用がある
≪採取時期≫葛デンプンは秋から冬にかけて採取と繊維とり、上澄みとり、日干しを行うと純白のデンプンが出来ます。この作業を冬に行うことで良質なでんぷんが出来ます。これを「寒晒し(かんざらし)」といいます。
くず・よもやま話
☆葛の名前の由来は昔の大和の国(今の奈良県)吉野郡の国栖(くず)に住んでいた人々が都で葛粉を売り歩いたことが由来とされています。
☆日本書紀によりますと推古19年(611)に推古天皇が兎田野(宇陀郡大宇陀町)に薬猟(くすりがり)して山野に薬草や鹿の若角を求めた記録があります。
☆昔は葛の蔓から繊維を取り出して糸として紡いで着物にしていました。
☆葛の根からとれるデンプンを「葛粉」といい、葛粉は「葛きり」「葛餅」「葛湯」などに加工されて食されています。
日本で葛粉が有名な地域として「奈良吉野葛」「静岡掛川葛」「三重伊勢葛」「福井若狭葛」「石川宝達葛(ほうだつ)」福岡秋月葛」「宮城白石葛」が有名です。
☆クズは秋の七草の「葛(クズ)桔梗(ききょう)萩(はぎ)薄(すすき)女郎花(おみなえし)藤袴(フジバカマ)撫子(なでしこ)」の一つに挙げられます。
イノコズチ
≪和名≫ イノコズチ
≪生薬名≫ ゴシツ
≪科目≫ ヒユ科 イノコズチ属
≪分布≫ 北海道を除く本州から四国、九州の野山のこかげや道端、荒地などに生息する多年草の植物
≪出典≫ 神農本草経
《成分》イノコステロン、エクジステロン、クルタミン酸、サポニンのオレアノール酸、
アミノ酸のアスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、プロリン、グリシン、アラリン、ヒスチジン、リジン、ベタイン、アルギニン、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、カリウム塩などが含まれている。
《イノコズチを煎じて服用した場合》
浄血作用、利尿作用、通経作用が期待でき、神経痛、腰痛、関節炎、膝の痛み、脚気、リューマチ、生理不順、利尿などの効果がある。
イノコズチ・よもやま話
日本では日本現存最古の薬物辞典と言われる「本草和名」918年によると「牛膝和名為乃久都知(いのくづち)、一名都奈岐久佐(つなぎぐさ)」という記述があります。これは猪の子槌(いのこづち)の意味で、イノシシの子(うり坊)の膝頭に似ているという事からつきました。
イノコズチには日陰で多く見られる「日陰猪の子槌」と逆に日向で多く見られる「日向猪の子槌」
あります。薬用としては「日向猪の子槌」を使用します。「日陰猪の子槌」は「日向猪の子槌」に比べて大きくならないので薬用には使用しません。
日本にはイノコズチは雑草として繁殖しており、資源豊富な生薬で日本で自給可能な数少ない生薬と言えます。
イノコズチの種子は動物の毛や衣類にくっ付いてくるので「泥棒草」や「ひっつき虫」とも言われます。
ムラサキ
≪和名≫ むらさき 紫根
≪生薬名≫ シコン
≪科目≫ むらさき科
≪分布≫ 北海道から九州の日本各地や朝鮮半島、中国大陸などに広く分布し山地や草原などに広く生える多年草の植物
≪出典≫ 神農本草経
《成分》ナフトキノン類、アセチルシコニン、シコニン、
βージメチルアクリルシコニン、βーヒドロキシイソレリルシコニン、イソブチルシコニン、イソバレリルシコニン、イソブチルシコニン、テトラクリルシコニン、アルンカナンシコニンには肉芽形成作用(皮膚の再生作用)がある。
《ムラサキを煎じて服用した場合》
解熱、解毒、利尿作用、殺菌作用、抗炎症作用、肉芽形成促進作用、創傷治癒促進作用がある。
《入浴剤として使用した場合》
鎮静 消炎効果
ムラサキ・よもやま話
紫の根は「紅花(ベニバナ)」「藍(アイ)」「茜(アカネ)」と共に日本の古代染料に欠かせない素材でした。
古代日本と中国ではムラサキは高貴な人が着る服をムラサキの根で紫色に染色するために用いられた植物で聖徳太子の時代には中国で正式とされる「青・赤・白・黒」の上に「紫」を加えて6色とし、「紫」を最高の色として、朝廷の前で被る冠を染めて冠の色でその人の身分を決めました。
ムラサキは万葉集にも歌として詠まれています。万葉集が詠まれていた頃は普通に咲いていた花と思われます。万葉集は花を題材に詠んだのではなく、染料を題材に詠んでいます。
現在ムラサキは日本全国には殆ど自生しておらず、絶滅危惧種レッドデータブックに絶滅危惧種IB類(EN)として登録されています。
江戸時代には華岡青洲によりシコン、トウキ、ゴマ油、ミツロウといった原料で紫雲膏が作られました。
ハマビシ
《成分》アルカロイド、フラボノイド、タンニン、脂油
《ハマビシを煎じて服用した場合》
鎮痙, 利尿、消炎、解毒、降圧、鎮静、止痒
神経性皮膚炎など
《入浴剤として使用した場合》
かゆみ止め、神経緩和、鎮静、消炎
ショウガ
≪和名≫ ショウガ ハジカミ
≪生薬名≫ ショウキョウ カンキョウ
≪科目≫ ショウガ科
≪分布≫ インド又は東南アジア原産の多年草
≪出典≫ 神農本草経 中薬(中品)
《成分》
根茎にショウガオール、ジンゲロン、ジンゲロール、シネオール、ピネンなどの辛味成分
《ショウガを煎じて服用した場合》
血行促進、嘔吐を鎮めたり、食欲増進作用など血行促進による肩こり、腰痛、疲労回復に非常に効果がある。
《ショウガを入浴剤として使用した場合》
肩こり、腰痛、疲労回復、生姜又は乾姜(根茎の乾燥品)と陳皮を併用するとより効果が高まる。
ショウガ・よもやま話
古代日本について書かれた「魏志倭人伝」に生姜の名前(薑 はじかみ)見られ弥生時代には生姜が食されていた事がわかります。
山椒も「ハジカミ」と言われていました。山椒は「和のはじかみ」と呼ばれていました。生姜は薬味として日本人にはなじみの深い薬草で、冷奴の上おろし生姜を乗せて食したり、寿司の生魚の食中毒予防に「ガリ」としてを食したり生姜のしぼり汁とハチミツを熱湯に入れて風邪予防に飲用したりします。
漢方薬では、生姜や乾姜を含む漢方処方は多くあり、生姜や乾姜を含まない漢方薬を探す方が至難と言えます。
薬用に使用する生姜は植えてから1年経過した生姜を使用します。これを老成生姜(ひねしょうが)といいます。
ボタン
≪和名≫ ぼたん 牡丹 二十日草 深見草 名取草
≪生薬名≫ ボタンピ
≪科目≫ ぼたん科 ぼたん属
≪分布≫ 日本各地で栽培されている落葉低木
≪出典≫ 神農本草経 (中品)
《成分》
ペオノール、ペオノール配糖体のペオノライド、ペオノサイドなどや安息香酸、βーシトステトロール、カンペステロール、ベンゾイルオキシペオニフロリン、ペオニフロリン、オキシペオニフロリンなどが含まれています。
《ボタンを煎じて服用した場合》
牡丹皮を服用すると解熱、鎮痛、消炎、浄血などが期待でき、消炎性の浄血薬として虫垂炎、生理不順、血の道、婦人科疾患、月経不順、月経困難症、痔疾、頭痛、腹痛などの症状を緩和する。
☆ 牡丹皮と他の薬草(ドクダミ、ヨモギ、麦茶など)と一緒に煎じて服用しても良い。
ボタン・よもやま話
牡丹が日本に渡来した時期は諸説あり、平安時代に弘法大師が中国から持って帰ったと言われます。
弘法大師が中国で修行をしていた時期は唐王朝で唐王朝時代の頃から花を愛好する文化が芽生え始め、牡丹の花を愛でるようになりました。日本では江以降に武家の間で牡丹栽培盛んになりました。
牡丹は別名「百花の王=花王富貴花」といわれます。
ちなみに日本の家庭用洗剤メーカー花王株式会社が作った「花王石鹸」のラベルには牡丹の花が描かれています。ついでに芍薬は1ランク下の花の宰相という意味の「花相」といわれます。
ことわざで「立てば芍薬座れば牡丹…」とあり女性の美しさの比喩に使われますが
別の意味として芍薬の花が上を向いて咲くのに対して牡丹の花は下を向いて咲くのでこういわれています。
☆薬草は口から入れるのが一番効果がありますが蒸気浴剤、薫浴剤、入浴剤としても食用の次に効果が認められています
《参考文献図書》
野草と健康 東洋医学研究所所長 著
食べる薬草辞典 崇城大学薬学部薬用植物園教授 村上 光太郎 著
東洋医学全集
原色牧野和漢薬草大図鑑